【not 手書き】ペンの持ち方・選び方

はい。皆さんこんにちは。

文房具評論家のこんのです。

今日はペンの持ち方・選び方について語っていきたいと思います。このテーマにはかなり自信があるので、いつもの意味のないブログよりも読んで欲しいです。特にお子さんのいる家庭の方は、ぜひこれを読んで、文字書き教育の参考にしていただきたいです。

 

今日のお品書きはこちら

①ペンを正しく持つ意義。

②ペンの正しい持ち方。

③ペンを正しく持てなくなるのはなぜか。

④「ドクターグリップ」という存在。

⑤ペンの選び方・めんペンイチオシのペンたち。

 

ということで始めて行きましょう。

 

①ペンを正しく持つ意義。

「お前、ちょっと字が綺麗だからって、その分野の話をしてイキろうとしてるだろう」という見方をする方もいらっしゃると思いますが、ここに関しては完全に否定させていただきます。

ちゃんとした意義があるのです。

 

以前、林修先生の授業番組を見た気がするのですが、その中で、「子供に最低限のしつけをすることがとにかく大事」という話をしていました。

そのしつけの内容に、「姿勢を良くする」というものがありました。曰く、「ちゃんと疲れないで勉強できる姿勢さえあれば、自ずと学力もついてくる」とのことです。

学力が上がるには色んな要素が絡みますから、一概に姿勢が良いから学力が高いとはいえないでしょう。

しかし、疲れる姿勢と疲れない姿勢が存在することは事実であり、疲れない姿勢の方が良いことも明白です。なので、結論としては間違ったことは何も言ってはいません。

 

プログラミングが必須になったとはいえ、高校までの勉強はまだまだ机に向かってペンや鉛筆を走らせるのが基本だと思います。

とすれば、姿勢と同じように、「疲れないペンの持ち方・文字の書き方」をマスターすることは大変有用だと思われます。学力はともかく、疲れるよりは疲れない方が良いので。

この「疲れないペンの持ち方」はすなわち正しいペンの持ち方なのであり、これを習得することは生涯の総疲れ量に影響する重要な問題なのです。

 

余談ですが、大人になると字を書く機会は多くの人が減ると思います。かわりにパソコンに向かう時間が増えるでしょう。

ところが、「疲れないパソコンワーク」というものはあまり確立されていないように感じます。疲れにくさを売りにしたノートパソコンなんて見たことがありません。

せいぜいがキーボードの分割や腕置きの設置くらいなもので、前屈みになってしまう対策などはまだまだ不十分です。

これが人類の総疲れ量・疲れ感を爆増させていることは紛れもない事実だと思います。個人的には満員電車にも匹敵する問題だと思います。早くなんとかしなくてはなりません。本筋とは関係ない話ですが。

 

②正しいペンの持ち方

そもそもなにが「正しい」とされるべきかですが、本解説の流れでは、疲れないということが目的になります。

疲れないためにはどうすれば良いかといえば、筆圧や握りの強さが弱くなるようにペンを持ち、最小限の労力で文字が書ければ良いのです。

無駄な力をかけなければその分だけ疲れなくなります。当たり前の話ですが、おそらくこういう解釈で良いと思います。

 

 

調べたところ、ちょっと諸説ありそうでしたが、概ね僕が思う正しい持ち方が、世間的にも正しい持ち方とされているようです。

 

それがこちら。

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特徴としては、

1)親指先、人差し指先、中指の内側でペン先を支えており、それぞれが反らずに無駄な力をかけていない。

2)ペンの中腹が人差し指の付け根、第三関節のあたりに当たっており、ここにも第二の支点ができている。

3)そのためにペンが寝ている。

ということが挙げられます。

どれも重要ですが、特に支点が二つある点が重要です。ペンが寝て、支点が中腹にも置かれているために、指先にあまり力を入れずとも、安定した筆記ができる構造になっています。

この持ち方が、一番握る力や筆圧が弱くて済む持ち方だと思われます。

 

悪い例も比較してみましょう。

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大枠は変わらないですが、人差し指が反っている形のこの持ち方。

前述の持ち方では不安定と感じ、ペン先側に力を入れて持とうとしています。

支点が二点ある点では悪くなく、惜しい握り方なのですが、人差し指を反らせて力をかけている分、それを受ける親指先、中指の内側にも負荷がかかり、いわゆるペンだこが出来やすい持ち方になります。少し意識を変えれば矯正できそうな形です。

 

次はこちら。

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さらに親指先が人差し指を巻き込み、「握り込んでいる」感の強い持ち方です。ここまで来ると、ペン先側の支点で全てを解決しようとしてしまい、ペンが垂直方向に立ちがちになり第二の支点が消えるため、その分も指先でカバーして書く必要があります。指先が痛くなってしまいそうです。

 

最後はこの持ち方。

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人差し指にペン本体を密着させるように持っています。指が反る形よりは、マシな持ち方に見えます。実際マシかもしれないです。

この持ち方をする人は2種類に分かれます。ペンを立てる人と、寝かせる人。

ペンを立てる人の場合は、密着している人差し指がそれほどサポートにならず、結局ペン先部分に力を入れて書くことになり、一支点を強く持つことになります。やはり疲れは溜まりそうです。

指を反らせる持ち方よりは力が入りにくいため、この持ち方でペンを立てる場合、ペン先に非常に近い部分を握り込む形になります。

こういう持ち方のために、最近では持ち手のゴム部分がペン先まで続いているペンもでていますので、一定数がこの持ち方をしているはずです。

ましなのが、この形でペンを寝かせる持ち方。寝かせていれば、密着した人差し指が支点のサポートになりますから、指先の握り込みは小さな力で済みます。こういう持ち方をする人は、おそらくペン先に近い部分は持たないでしょう。長めに持ってサラサラと書くタイプです。

一般的には正しいとされていませんが、今回の目的に照らすと、この形で寝かせる持ち方は正解と言っても問題ないと思います。

 

概ねこのあたりが典型的な悪いタイプの持ち方だと思います。共通しているのは、「指先に力をかけすぎていること」です。本来は指先に力をかけるというよりは、人差し指の付け根の上を使ってペンを「乗せる」ような感覚で、弱めの筆圧で書いていくのが良いと思います。

 

③ペンを正しく持てなくなるのは何故か。

正しい持ち方でペンを持ち、優雅に文字をしたためている人は決して多くはないという印象です。それは何故なのでしょうか?

その原因は大きく二つに大別されると思います。

1)成長期に力が足りないため。

多くの子供が小学一年生あたりから本格的に字を書くことになると思います。ここで問題になるのが、小学生の筋力です。

あまり筋力がない小学生は、なかなか綺麗な線が引けず、その対策として筆圧を上げていくのだと思います。

これはおそらくほとんど誰もが通る道で、筆圧を一時的にでも上げずに小学校生活を乗り切ることは難しいと思います。

幼少期からデスクペンの硬筆を嗜んでいるなどの特殊な事情があれば、また別かもしれませんが。

 

そしてもう一つが、

2)丸文字に対応するため。

女の子は丸文字の方がかわいいとされています。これは仕方ないでしょう。

問題は、丸文字を書くためには円運動が増えるということです。実際にやってもらえば分かると思いますが、基本的に丸いものを書くときはペンが立っている方が有利です。

ペンの持ち手を固定して、ペン先のみをくるくる動かすのが一番楽な書き方になります。

このため、丸文字を書く人はペンが立ち、二つ目の支点がなくなり、指先の一点に力をかけて文字を書くことになりがちです。

これは円形の頻出するアルファベット圏でも言えるのではないでしょうか。知りませんけど。

僕はその書き方を好まなかったので、比較的正円を書かなくて良い筆記体を使用していました。…というのは言い訳で、筆記体は多分イキる為に使っていたのだと思います。

まぁ、結果として僕はペンを寝かせることができたので、結果オーライとさせてください。

 

さて、それではどうすれば正しい持ち方ができるのか。前述1)の通り、筆圧の上昇は避けては通れないと考えましょう。すると、どこかで矯正する必要が出てきます。

字をある程度綺麗に書くためには、3つのステップが必要です。

 

1.線をまっすぐ書き、はらいやハネを最低限できるようにする

2.字の特徴(この字は二画目を長めに取った方が格好良くなる、など)を覚える。

3.これを身体に馴染ませる。

 

1と2は同時に起き得ますが、これが完了する頃に矯正を行うべきでしょう。

小学校も高学年になれば、あるいは中学生になれば、力も付いてきて、「意外と力をかけなくてもまともな線が書ける」ということに気付いてくれそうなものです。

まず筆圧を下げる訓練をして、そこから字の形を馴染ませるのが最善でしょう。現実には難しい部分がたくさんあるので、理想論ではありますが。

 

しかし、これはある程度綺麗に文字を書くためのステップです。

 

一生丸文字を描き続ける決心をしている人であれば、対処が難しいです。疲れてしまいますが、ペンを立て続けて丸文字を書く他ありません。疲れよりも丸文字の価値の方がその人にとって高いのであれば、その価値観は否定できません。

 

ちなみに、字は基本的に伝われば用をなします。僕が綺麗に字を書こうとするのは、単純にその方が格好良いと思っているから以外の何物でもなくて、自己満足です。

ですから普通の人は、普通に字を書けばいいと思います。その場合はステップ2の、文字の特徴研究を徹底しなければ、自然とそれなりの文字に落ち着きます。

 

一定程度も上手い字を書こうとしない人は、ステップ1も2も飛ばして成長するでしょう。

それは読める字を書くことに価値を感じていないだけで、テストで減点されるリスクやメモが伝わらない不便よりも、嫌いな文字練習を行う不快感が強いという価値観ですから、これも否定できません。

そういう場合は、ある程度の字を書くという前提が崩れてしまうので、正しい持ち方云々の問題だけで解決できるものではないような気がします。

 

ただ、親の字がちゃんと格好よければ、真似したくなってこの価値観にならない場合もあると思います。もし自分の子供がこうなることをよしとしないのであれば、まずは自分から、が一番かもしれません。

 

④「ドクターグリップ」という存在。

独特の美しいフォルム(初代は特に美しい)に、振ると芯が出るギミック。誰もが一度は憧れる、ドクターグリップ。

このペンは、「ハードユースに最適」という謳い文句で売り出されていたと記憶しています。

この「ハード」というのは、たくさんの字を書くという意味がキャッチコピーの第一義だとは思いますが、「筆圧がハードな状態で書く」の意味の方が、実態としては強い気がします。

 

ドクターグリップは太いです。デカいです。

正しい持ち方をしている場合、手が大きいのでなければ細いペンの方が疲れないと思います。

 

ドクターグリップのウリは、

・圧倒的に厚いゴムグリップが生み出す負担軽減機能と、すべり防止機能。

・とにかくペン先を強く握りたい場合に、太い軸の方が指の接地できる可能性のある面が多く、握り込みやすい。

という二点です。

強く握ることを前提とすれば、細いペンよりは疲れないはずです。

ですが、強く握る以上、弱く握るよりは疲れるはずです。指に強い力をかける場合、関連する筋肉も緊張するはずですから、指自体はもちろん、腕や肩にも負担がかかる恐れがあります。

疲れないという目的に対して、最善の状態とは言えないでしょう。

 

ドクターグリップを使い続けるということは、この強い握りと心中するということと同義です。この太軸のゴムグリップのまま筆圧を下げることはほぼ不可能だと思います。

 

よく議論がありますが、僕は別に小学生はシャープペンを使っていいと思います。便利ですから。

ですが、ドクターグリップにハマってしまうと、一生筆圧が強いままなのです。

途中で自分の疲れに気がつけば良いのですが…。

筆圧が強いまま他のペンを試しても、「やっぱりドクターグリップでなきゃ!」となるのです。この沼にハマることは気をつけなければなりません。

幸いにして今時は、クールな細軸シャープペンも安価に出ているようですので、そういったもので徐々に筆圧矯正を実現していくのが適切と思います。

僕も使ってましたけどね、ドクターグリップ。

 

余談ですが、アルファゲルというシャープペンも一時期市場を席巻しましたね。おそろしくブヨブヨのグリップのやつ。

あれは握る力がいくら強くても、握っている部分は痛くないよ、ということなのですが、ブヨブヨを安定して持つためにますます力がかかり、筋肉疲労は増えると思います。

 

⑤ペンの選び方・めんペンおすすめのペンたち。

それでは筆圧移行期やその後、どういったペンを使うのが良いのでしょうか。疲れないのでしょうか。

 

前提としては、シャープペンで行きたいと思います。

ボールペンでも良いのですが、ボールペンは最近、ジェットストリームを皮切りに低粘度油性インクが登場し、旧来の油性インキ、水性インキ、ゲルインキと、筆記感が大きく違うペンが出ています。

どれが最適かということは僕もわかっていなくて、好みの問題もあると思うので、ちょっと避けさせていただきます。

 

シャープペンはシャープペンで、芯の問題があるわけですが、大抵の人は2B〜HBあたりを使うでしょうし、この範囲であれば大きな筆記感の違いはないと思います。もちろん芯のブランドによっては、定着の良さ、発色、紙面摩擦の強さ(キュルキュル音が鳴るとか)など色々違いはあるんですが、ボールペンよりは些細な問題です。

一昔前は、硬度が高ければ、ぺんてるの「ハイポリマーフォープロ。硬度が低めなら、三菱の「ハイユニ」が玄人の間では鉄板だったのですが、両方とも廃盤になってしまいました。寂しいですね。それ以上に、この話どうでもいいですね。笑

 

気を取り直して、良いシャープペンの条件について見ていきましょう。

1.グリップが滑ると強く握りたくなるので、慣れるまでは滑りにくいものを。

2.重心は「ほどよく上」か「ほどよく下」。もしくは端的に軽いものも良い。

 

僕の考えでは、重要なのはこの二点です。

1は説明するまでもないと思いますが、問題は2の重心。

重心が高過ぎるペンは、書いている時に上側がブンブン振れることになり、その分書くのに要する力が増えてしまいます。

重心がほどよく高いペンは、うまく人差し指付け根に乗れば安定感がでるので、サラサラと心地よく書けます。

万年筆は基本的にキャップを後ろに付けて使うものなのですが、これはキャップをつけることで、この理想の重心位置に持っていくように設計されているからなのです。

重心がほどよく低いペンは、少しだけ筆圧を後押ししてくれます。これで、自分がかける筆圧は少なくて済みますね。

重心が下すぎるペンは、下部(ペン先部)を中心として動いてしまうので、自然とペンが立ちがちです。これが良いという人もいますが。

軽いペンは可もなく不可もなくです。

 

悪い方から例示していきます。僕はぺんてる信者なので、若干ぺんてる商品が多いですが、許してください。

 

1)ぺんてる グラフギア1000

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ぺんてる公式サイトから転載。

何とも中二心を刺激する見た目のグラフギア1000。友達が使っていたらちょっと憧れますね。

ペン先が細いですが、画像右側のクリップ部を押すことで、「バチン!」と勢いよくペン先が収納されるギミックがついています。

が、しかし…このギミックのためなのか、ペンの上部がめちゃくちゃ重いんですよこれ…。なのでおすすめはできないのです…。

 

2)ぺんてる グラフギア500

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先程のグラフギア1000は、確か全身金属なのですが、このグラフギア500は、ペン体は基本的に樹脂で、ペン先のみ金属です。

製図用シャープペンによくある、金属をザラザラ状に加工した「ローレット」型のグリップを採用しています。これも滑りにくいです。でもサビます。まぁサビても滑らないですし、勉強の証感は出ますけど。

しかし、金属素材がやや重く、金属部分も短くペン先に寄っているため、今度は重心が低すぎるんですよ…。

グラフギア1000に比べれば、まだ使いやすさはこっちの方が上かもしれません。ペン先の重さが筆圧を十分に補ってくれるので、多少ペンが立っても弱い握力で使える、という見方もできます。

 

3)rotling Rapid

 

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ここからはおすすめが続きます。

ドイツメーカー、rotlingの秀作です。「軽い」に分類されますね。グリップのゴムが気持ちよく、ペン先がしまえる機構があっても重心が上に行かない優れもの。おそらくほぼ樹脂製だからでしょう。

取り回しやすく、おすすめです。

 

4)ぺんてる SMASH & グラフ1000

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上がSMASH。下がグラフ1000です。

SMASHは、製図用のグラフ1000の一般モデルのようなものなので、この二つは性質が似ています。どちらも樹脂製のボディに、薄めの素材の金属グリップが付いています。

ゴムが金属の間から飛び出すという点でも似ています。

SMASHの方が若干重心が下で、力を入れずに書けます。画像はわかりにくいかもしれませんが、グリップ部からいくつもの四角いゴムが出てきていて、絶望的にキモいです。でも僕の相棒なのでキモ可愛いということにしておいてください。

グラフ1000の方が全体に軽く、自由に動きます。この点は好みですね。

ちなみに前述のグラフギア1000とグラフ1000は名前が似ていますが完全な別物商品で、値段が同じ割に書きやすさは雲泥の差なので注意してください。

 

5)ぺんてる ケリー

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これはちょっと特徴的です。いくつか特徴があります。

・前述すべてのペンにあった、グリップの滑り止めがない。

・キャップを後ろに付けて使う、キャップタイプの珍しいシャープペン。

・重さはかなりあるが、重心はやや上で持ちやすい。

弱い筆圧が板について来て、グリップのサポートが要らなくなった頃に買いたいペンです。重くても使いやすいです。

そして何よりもかっこいい。世界で一番かっこいいシャープペンです。色も爽やかな青から可愛いロゼまで揃っていて全部欲しいです。

 

 

まとめ

無事結構な長さになりましたが、いかがでしたでしょうか。

ぶっちゃけ最終項は僕の趣味でしかないのですが…笑

 

字を書くこと自体や、広く疲れないための工夫について、何かしら理解や興味に資するものであれば幸いです。

お読みいただき、ありがとうございました。